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同じ黒なのに、育ち方が違う。 

 

黒い服を、二種類作りました。

どちらも、表面は黒。

でも、その下に隠れている色が違います。

 

ひとつは、BLEACH INDIGOに黒。

 

もうひとつは、BLEACH BLACKに黒。

新品のときはよく似ていても、着ていくほど、まったく違う服になっていきます。

 

こんばんは。cantáte 松島です。

 

今回は、ワックス風のコーティングデニムで作ったJacketとFlare Trousersについて。

レザーのように見えますが、レザーではありません。

普通のデニムでもない。

そしてこの服は、新品の状態だけを見ても、まだ半分しかわからない。

<cantáte>

" WWⅡ T-Back Jacket - WAXED "

COL : WAXED BLACK , WAXED INDIGO

¥93,500 TAX IN

 

" Denim Flare Trousers - WAXED "

COL : WAXED BLACK , WAXED INDIGO

¥77,000 TAX IN

 

黒の下に、何色を隠すか。

作り方は、乱暴です。

デニムにブリーチをかけ、その上から黒いコーティングを重ねています。

せっかく染めたデニムの色を一度壊し、さらに黒で覆ってしまう。

ずいぶん遠回りですが、最初から黒い生地を使うだけでは、この奥行きは生まれません。

 

今回は、ベースの異なる二種類を作りました。

WAXED INDIGOは、BLEACH INDIGOの上に黒。

 

WAXED BLACKは、BLEACH BLACKの上に黒。

表面だけを見れば、どちらも黒です。

けれど、着用を重ねてコーティングが擦れたとき、下から現れる色が違う。

WAXED INDIGOは、黒の奥から少しずつ青が戻ってきます。

一方のWAXED BLACKは、下から現れるのも黒。色が大きく切り替わるのではなく、黒の濃淡や艶の違いとして変化が積み重なっていきます。

 

片方は、隠していた色が戻る黒。

もう片方は、黒の中に表情が増えていく黒。

同じ加工をしていても、時間の現れ方はまったく違う。

機能のためだけではないコーティング。

このコーティングには、撥水性と防風性があります。

天候に左右されにくく、風も通しにくい。見た目を変えるためだけの加工ではなく、服としてきちんと役に立つものです。

ただ、機能だけを考えるなら、もっと均一で、変化しにくい仕上げにもできたはずです。

今回は、そうしていません。

腕を曲げる。ポケットに手を入れる。椅子に座る。歩く。

そのたびに表面へシワやアタリが刻まれ、よく触れる場所からコーティングが少しずつ変わっていきます。

新品の状態を長く保つことより、使った時間がきちんと残ることを選びました。

傷まないための機能ではなく、傷み方まで含めた機能。

ぼくは、そのくらいのほうが服として誠実だと思う。

ジャケットは、加工がいちばん正直に出る。

ジャケットは、この加工がもっとも正直に現れる型です。

身体の中でも面積が広く、袖、肘、肩、ポケットまわりと、それぞれ動き方が違う。縫製線も多いため、色の残り方も剥がれ方も均一にはなりません。

よく動かす肘には深いシワが入り、端や縫い目には下のデニムが覗く。反対に、動きの少ない場所には表面の黒が残る。

WAXED INDIGOなら、そこに青が混ざってくる。

WAXED BLACKなら、同じ黒の中に濃淡と鈍い艶が生まれる。

新品のときが、いちばん整っているのは確かです。

でも、このジャケットに限っては、少し乱れてからのほうがやべーです。

やばすぎて語彙が乱れました。

 

パンツは、加工を歪ませる。

同じ生地を使っていても、パンツは違う変化をします。

ジャケットが面で見せるものなら、こちらは動きで見せるもの。

歩いたとき。座ったとき。脚を組んだとき。

膝や腰にシワが入り、裾が揺れるたびに、表面の黒と下にある色の見え方が変わります。

フレアのきれいな輪郭は残りながら、表面だけが不規則に崩れていく。

黒いパンツとして合わせやすいのに、近くで見ると何かがおかしい。

その少しの異物感が、穿いたときの印象を残します。

このシリーズの中では、いちばん変化を楽しむための型です。

 

 

どちらの黒を選ぶか。

はっきりと変化を見たいなら、WAXED INDIGO。

黒の印象を残したまま、濃淡や艶の変化を楽しみたいなら、WAXED BLACK。

これは、どちらが優れているという話ではありません。

数年後、黒の下から青が戻ってきてほしいか。

それとも、最後まで黒のまま、表情だけが深くなってほしいか。

 

新品の色ではなく、これから現れる色で選ぶ。

 

デニムの色落ちには、ヒゲがどうとか、アタリがどうとか、いろいろな楽しみ方があります。

 

でも、服はそんなに行儀よく育たなくていい。

 

雨に降られた日も、椅子に座り続けた日も、ポケットに何度も手を入れた癖も、全部が表面に残ればいい。

 

同じ黒から始まっても、同じ服にはならない。

 

ようやく、買った服をすぐに着られる季節が来ました。

 

しばらくクローゼットで待たせることなく、明日から着られる。それだけで、服を買う楽しさもずいぶん違うと思います。

 

お客さんが前のめりに選んで、買っていく姿を見ていると、ぼくまで物欲を刺激されてしまう。作った本人なのに、改めて欲しくなるんだから危険です。

 

どちらの黒にするか。何と合わせて、明日はどこへ着ていこうか。

 

そんなことを考えながら、まずはたくさん着てもらえたらと思います。

 

この服が完成するのは、黒が少し剥がれた、その先です。

 

cantáte 松島 紳